軽度の認知症の高齢者の債務整理(京都府宇治市在住70代男性Wさん,任意整理・過払金請求)
相談前
70代独男性Wさんは,長身でおしゃれな紳士風の外見です。若いころから随分とモテたらしく,当事務所にお越しになると,昔のことを嬉しそうに話していました。Wさんは過去に結婚していて子供もいるのですが,放蕩が過ぎたために離婚をし,現在は独り暮らしです。
Wさんの放蕩癖は70代となっても治まらず,消費者金融等の借金が200万円以上ある状態でした。身体が丈夫で元気なWさんはタクシーの乗務員としてフルタイムで働いて収入を得ており,借金のこと一向に気にすることもなく過ごしていました。ところが,仕事中に細かな交通事故を繰り返すようになり,収入がどんどん減ってしまい,返済に窮するようになってしまいました。
困ったWさんは当事務所に相談に訪れました。
みらい司法書士事務所の解決方法
Wさんは5社から200万円の借入がありましたが,調査の結果,過去の完済分を含めて300万円以上のの過払い金が発生していることが判明し,無事に回収して借金の問題を解決することができました。
解決後
Wさんの第一印象は若々しい元気な高齢者でした。多重債務に困ってはいましたが全く落ち込んでは居なく,これからも人生を楽しんでいくという気概に溢れていました。Wさんは受け答えもしっかりしており,借金の問題さえ解決すればタクシー乗務をしなくても年金収入で生活できると考えていました。
ところが,過払金の返還を待つ間にもWさんは細かな事故を繰り返し,当事務所で事故の相手方との和解交渉をすることになってしまいました。事故の経緯を聞くと当初は整合性の取れた話と聞こえたものが,重ねて聞くとおかしな点が多々あることに気づきました。どうもおかしいと感じたため,Wさんを説得して病院で診察してもらったところ,軽度の認知症であることが判明しました。
その後は,市役所の福祉課と連携して対応しましたが,日常生活の支援をする家族の居ないWさんに独り暮らしは困難であるとして,市役所の紹介する介護施設に入所することになりました。
司法書士からの一言
初期の認知症の症状は些細なものであり,本人も周囲も加齢による衰えと誤認しやすいそうです。当事務所でも当初はWさんが認知症であるとは全く疑っていませんでした。Wさんの借金の大元の原因は放蕩によるものですが,制御ができなくなってしまったのは認知症の為かもしれません。
Wさんは独居であったため,周囲に家族は居ません。Wさんは小さな交通事故をくりかえしていましたが,家族が居ないために運転を止めるものが居ません。当事務所に訪れてからも,自損事故を繰り返すWさんに運転はやめるように強く勧めても全く聞く耳をもってくれません。相手方のある物損事故を起こして当事務所が和解交渉をすることになって,ようやく運転を諦めてくれたのです。
あのまま認知症の症状が進行していれば,もっと大きな交通事故を起こしていたかもしれません。Wさんが多重債務となって当事務所を訪れたことをきっかけに病院で診察を受け,行政の支援を受けることができたこと,人身事故を起こす前に自動車の運転を止めることができたことは幸いでした。